書籍名:「経営者になるためのノート」
推奨対象:コンサルタントと経営者の違いを意識し始めた方、柳井正について興味がある方、組織の長になりリーダーシップに悩みを抱えている方
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時間がない方はここだけ読んで下さい
ファーストリテイリングの創業者で日本一の資産家としても有名な柳井正氏による書籍です。社内の幹部職員向けに作成した経営者になるための虎の巻を”書き込み式ノート”の形で書籍化しました。
本書では柳井氏が経営者になるための力として掲げる「変革する力」、「儲ける力」、「チームを作る力」、「理想を追求する力」を育てるために大切にすべきことがまとめられています。
本書はファーストリテイリングの幹部職員向けの虎の巻であるにも関わらず、内容は普遍的で、どの会社のリーダー(社長、部長、課長など)にも参考になると思います。抽象論になりすぎず、自分に置き換えて考えられる適度なレベル感にまとまっている点が素晴らしいと思います。
これは柳井氏自身が書籍や面会を通じて経営学者、歴史的経営者、最先端のリーダーについて理解を深めることで、自社の経営に活かしてきたことによると考えられます。本書においても引用として幅広い経営者、学者の名前が挙がっています。
余談にはなりますが、BCG(ボストンコンサルティング)を中心に、昔からかなりの数の戦略コンサルタントが卒業後にファーストリテイリングに参画しています。私はBCGなどの戦略コンサルタントが同社に転職することを疑問に思ってきました。柳井社長のワンマン経営と思われがちですが、普遍的な経営をされているからポストコンサルタントも違和感なく参画できるのかなというように思うようになりました。
柳井氏は「全てをお客様のために徹する」べきであり、「会社は誰のためのものかと聞かれたらお客様のためというのが本質」と述べています。私は本書の直前に村上世彰氏の「生涯投資家」を読んでいたこともあり、村上世彰氏と柳井正氏の企業観の違いが大変印象的でした。
印象に残った点
常識を疑う
各章で大切にすべきことが7つずつ挙がっているのですが、「変革する力」の章においては「常識を疑う」が核となっているように感じられました。常識離れしたほど目標を高く持つ、常識を疑って自問自答するなどです。
自問自答する
私はコンサルタントになりたての頃一緒になったマネージャーから「毎回自分の頭で考えることの積み重ねでしか成長しないよ。あなたの人から学ぼうとする姿勢そのものは重要だけど、徹底的に自問自答できなければいつまでたってもコンサルタントとして自立できないよ」と言われたことを強烈に覚えています。私はこの言葉を糧にしながらコンサルタントを続けているわけですが、柳井正氏もほぼ同じことを言っているのが印象的でした。
「優れた勘」や「いいアイデア」、「斬新な考え方」こういったことができる人は天才なのか。天才でない限り無理なのかということです。私はそうではないと思います。私が知る限り、こういったことができる人は全て、自問自答を日常的に行っている人です。...そこに行き着くまでの間に、どれだけいろいろなことを考えて、いろいろな人と話をして、そしていろいろやってみて、そこで真剣に自問自答するか。これが大事なのです。勘が働く人やアイデアが出る人というのは、これをやっているのです。
「経営者になるためのノート」(柳生正著)P.55
上を目指して学び続ける
この本を通じて最も印象に残った一節がありますので、引用しておきます。シニアになればなるほど重要なポイントだと思います。
ほんとうに優れた人はそれほど多くいないと思います。そういう人だけが、本当に先端の情報を持っています。ですから、いかにそういう人たちに早く行きあたるかといったことを考えて仕事をしないといけません。そして、その時に最も重要なことは、そういう人たちに行きあたった時に、しっかりと対話ができる力を自分が身につけておかなくてはいけないということです。
「経営者になるためのノート」(柳生正著)P.60
リーダーシップ
部下のモチベーションコントロールの話が書かれていますが、このパートはあまり共感出来る点がありませんでした。共感できなかったという点でより印象に残りましたね。一人ひとりが自立して自分の成長に向き合っている戦略コンサルティング業界に身を置いているが故の感想だと思います。(この辺り、将来経営者を目指すとすれば、その際の大きな課題になりそう。。。)