PwCコンサルティングのパワハラ問題に思うこと

コンサルティング業界ではPwCコンサルティングのパワハラ問題がクローズアップされています。マッキンゼー、BCG出身で、現在はPwCコンサルティングに移籍している堤裕次郎パートナーが、自身の出張にまつわる問題(カラ出張、社費での経費精算)を告発した女性マネージャーを、永妻恭彦ディレクターを通じて不当に退職に追いやったという事案について、プレジデント社がPwCのパワハラ案件として暴露しています。

この事案はPwCコンサルティングサイドの弁護を森・濱田松本法律事務所高谷知佐子弁護士(パワハラ問題で曰くつきの弁護士)が担当していることで、更に注目を集めているようです。

ただ本事案は決して珍しい事案ではありません。パートナーを頂点とするピラミッド型の組織体制を敷いている戦略コンサルティング会社においては、権力のあるパートナーに目をつけられた結果として退社を余儀なくされることは日常茶飯事だからです。コンサルティング業界ではパワハラ的なことは公然と行われていますし、それがこれまであまり明るみに出なかったのは、パートナーをはじめとするシニアメンバーと、マネージャー・ジュニアスタッフは以下のようなスタンスで働いているからです。

シニアメンバーのスタンス

  • 仕事ができない、コミュニケーションが面倒なスタッフはアウト(クビ)にすればOK
    ※能力・ファームにとっての「都合の良さ」を兼ね備えていないと、プリンシパル・パートナーには上がれない
  • ジュニア・マネージャーレベルの代替人材はいくらでも採用できる
  • 仕事をとってきているのは俺/私。マネージャー以下のアサイン権は自分にある

マネージャー以下のスタンス

  • それが嫌だったらやめれば良いし、仮にファームを辞めても働き口はいくらでもある
  • パワハラなんてどうでも良いことに巻き込まれるのは時間の無駄

 

上述の通りパートナー・プリンシパルにとってはコンサルタントは使い捨ての駒であり、その仕組みを理解した上で戦略コンサルティング会社に長い時間在籍するコンサルタントには、「受け手が嫌だと感じているか」というハラスメントの黄金要件が当てはまらないケースが多かったのです。PwCコンサルティングのような事案が弁護士を立てた係争に発展するようになった事自体が、コンサルティング業界に長く身を置く人間としては隔世の感があります。

昨今の世の中の風潮として、セクハラ、パワハラに対する世間の目は厳しくなっています。しかし、どこのトップファームにも何人かはパワハラを平然とやってのけるパートナー・プリンシパル/ディレクターが存在します。これから戦略コンサルティング会社に入る方はそういう方とは距離を置けるよう気をつけましょう(笑)

戦略コンサルティングファームの典型的なパワハラ例をいくつか紹介したいと思います。

プロジェクト炎上の責任を押し付けられ、一発退職勧告

長いことコンサルティングを続けていると、所謂炎上プロジェクトにアサインされてしまうことがあります。炎上プロジェクトとは、アウトプットがクライアントの期待値を下回り、事態の沈静化のために予算オーバー(もしくはコンサルタントの超絶ハードワーク)で追加作業をしなければならないようなプロジェクトを指します。

炎上プロジェクトはパートナーの案件の取り方に起因するケースが多いです。

もちろん、マネージャー以下のケイパビリティ不足によってプロジェクトが炎上することもありますが、その場合は当然の結果としてマネージャーやジュニアがファームを去る(=クビ)ことになります。

ここではパートナー起因の炎上プロジェクトを深堀りすることにします。

炎上プロジェクトに運悪くアサインされてしまうと、大抵のマネージャーやジュニアコンサルタントは1-2ヶ月の間、平均睡眠時間2-3時間で対応する羽目になります。結果としてうまく鎮火できれば、マネージャー、コンサルタントはパートナーから高級ディナーで「慰労会」を開いてもらうというのが業界の定番なのですが、うまく鎮火できずに「プロジェクト終了を待つしかない」というような完全炎上案件が稀に発生します。

このような完全炎上するプロジェクトが発生すると、案件を取ってきたパートナーに以下の3点で悪影響があります。

炎上させたパートナーへの悪影響

  • 炎上プロジェクトはプロジェクト単体としての採算が悪く、ファーム内で問題視される
  • クライアントからの信頼を失い、同じクライアントからのリピート発注を取りにくくなる
  • 「炎上パートナー」という噂が広がり、優秀なジュニアがアサインされることを避けるようになる

そこで、コンサルティング業界あるあるなのが、パートナーがマネージャーやコンサルタントに炎上プロジェクトの責任を押し付けるケースです。このパターンではマネージャーがかなり厳しい評価を付けられてしまい、最悪一発レッドカードで退職勧告というケースが見られます。パートナーとマネージャーの関係が強固な場合などには、シニアコンサルタントクラスが流れ弾を食らうケースもたまに見られます。

これって、世の中的には完全なパワハラなのですが、アップ・オア・アウトの人事制度をとっている戦略コンサルティングファームを中心にあるあるのパターンです。

名物パートナーに嫌われ、一発レッド/イエローカード2回で退職勧告

ロジカルさが重視される戦略コンサルティング業界ですが、プロジェクトの成果物を作る過程で、「成果物において何を優先するか?」についてパートナー、マネージャー、ジュニア間で対立関係が生じるケースが存在します。典型的な対立軸は以下のようなものですね。

  • パートナーとの典型的な対立軸

    • リソース(時間、スタッフ)vsクオリティの優先付け
    • 綺麗な整理vs成果への直結の度合いの優先付け

戦略コンサルティング会社においては、ある程度までは「誰が言ったか?」は関係ないフラットな関係が保証されているのですが、最終的にはクライアントに対して責任を持つ立場にある上位ポジションの意向が優先されることが多いです。コンサルティングも所詮クライアントに対するサービス業ですので当然です。

優秀だと言われているアソシエイト・シニアコンサルタントやマネージャークラスで、上位ポジションに噛みつきすぎた結果、「彼/彼女は言うことを聞かない」というレッテルを貼られてしまい、退職勧告につながるケースというのが一定数存在します。ただしこのパターンは名物パートナーの強権が発動されない限り、一発レッドは少なく、優秀なコンサルタントでありさえすればイエローが1枚出た時点で、2枚目が出ないよう周囲がサポートしてくれるケースも多いです。

従事するパートナー変更のミス

このパターンもよく見られます。コンサルティング会社で働いていると、プロジェクトのアサインを受けるパートナーが固定されてくることが多いです。

2-3人のパートナーに可愛がられて、そのパートナーの担当業界やプロジェクト内容が自分の望むキャリアパスと一致し、結果としてクライアントからも評価されていれば、それほどコンサルタントとして楽しいことはないと思います。(逆にどのパートナーからもリピートアサインを受けられないコンサルタントは、パフォーマンスが評価されていない可能性が高いため、それはそれで問題です)

しかし、1人のパートナーに可愛がられすぎている場合に、自身が希望する将来のキャリアパスとの不一致や、類似プロジェクトを繰り返すことによるコンサルタントとしての成長速度の低下などを理由に、他のパートナーのプロジェクトに参加したくなることがあります。

その場合「現在可愛がられているパートナーから離れたい」というメッセージを何らかの形・度合いで発信する必要があります。そのコミュニケーションがうまくできなかった場合、結果として「xxパートナー、xxマネージャーをあんなに可愛がっていたのに、評価会議で超刺しまくってるじゃん...」というケースを目の当たりにすることがあります。

上記は、コンサルティング業界を知らない方にとっては、理不尽に思えるものも少なくないと思います。しかし、コンサルティング会社ではパートナー制を敷いているファームが多く、ある意味個人商店であるパートナーの協同組合が会社の形を取っているようなものです。コンサルティング業界の仕組みをわきまえているコンサルタントは「個人商店の社長に嫌われたら、自分が出ていくのは当然だ」という理解のもとに働いているケースがほとんどです。

コンサルティング業界に長く身を置いている立場からすると、今回のPwCコンサルティングのケースは「こんなパワハラ日常茶飯事だな」という思いと、「昔ならこんな事案で弁護士が登場なんてありえなかったな」という思いで不思議な気持ちになりますね。

どうせ、コンサルティング会社に一生骨を埋める人などいないので、嫌ならやめたら良いわけです。他のファームに移るという手もあります。さっさと嫌な組織からは離れて自分の人生が輝くところに行くのが良いんですよ。戦略コンサルティング会社で下位10%に入ってしまうような人でない限り、そこそこ良い条件の働き口がなくなってしまうことなんて殆ど聞いたことがないですからね。

もちろん、こんなパワハラ話はない方が良いに決まっており、筆者もPwCコンサルティングで問題になっているようなシニアメンバーにはなりたくありません。しかし、コンサルタントは人間的に素晴らしい人ばかりではなく、戦略提言のプロフェッショナルであることに重きを置いている方が多いというのもまた事実。どうでも良いと思うことには触らない人が多かったはずなのですが...これもコンサルティング業界肥大化の1つの行く末なのかもしれません。

コンサルティング業界はなかなか独特の業界ですが、それでも就職/転職してみたいという方は、コンサルティング業界での転職成功例が多いムービンストラテジックキャリア、コンコードグループ、アクシスコンサルティングなどに早めに登録しておくと良いと思います。

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