イシューからはじめよ 知的生産のシンプルな本質(安宅和人)

書籍名:「イシューからはじめよ 知的生産のシンプルな本質」
対象:ロジカルシンキング、仮説思考を学んだことがある方、リーダー・管理職などのポジションの方 

元マッキンゼーの戦略コンサルタントである安宅和人さんによる、ロジカルシンキングの中級者向けの書籍です。問題解決の要素を、イシューの特定と解の作成に分解し、良いイシューの特定の重要性を指摘した上で、分析を進めていく上の戦略コンサルタントとしての基本形(仮説思考、ストーリーライン、アウトプット/メッセージドリブン)について詳述しています。

本書の題名は『イシュー「から」はじめよ』となっており、イシュー特定のみをテーマとしているのではなく、イシューの特定を「起点」にした問題解決全般がテーマです。マッキンゼーをはじめとする全ての戦略コンサルタントが、本書で扱われている問題解決手法を日々叩き込まれているのです。

初学者には理解が難しい箇所がありますので、ある程度ロジカルシンキングに馴染みがある方が、戦略コンサルタントのロジカルシンキング術を自身の業務に活かすという目的で読んでいただくのが良いと思います。

イシューの特定と解の作成の関係

マッキンゼーなどの戦略コンサルティング会社では、本質的なイシューの特定はパートナー、マネージャーなどのシニアメンバーを中心に行われることが多いです。本質的なイシューさえ決まれば、解の作成はジュニアなコンサルタントで十分できる(できなければならない)という考え方を取っています。いかにイシューの特定が難しいか、重要であるかということを顕著に表す事実だと思います。

本当にバリューのある仕事をして世の中に意味のあるインパクトを与えようとするなら、あるいは本当にお金を稼ごうとするなら、この「イシュー度」こそが大切だ。(中略)世の中にある「問題かもしれない」と言われていることのほとんどは、実はビジネス・研究上で本当に取り組む必要のある問題ではない。世の中で「問題かもしれない」と言われていることの総数を100とすれば、今、この局面で本当に白黒をはっきりさせるべき問題はせいぜい2つか3つくらいだ。

イシューからはじめよ 知的生産のシンプルな本質(安宅和人著)

良いイシューとは何か?

ちなみに戦略コンサルティング会社の面接においては、イシューはあらかじめ特定されている中で、解を導き出すというものが多いです。戦略コンサル未経験者はマネージャー未満での入社になるため、「解を作成する能力」を優先的にチェックされるからです。

本書の中では、What、Where、How型のイシューはWhy型のイシューと比べて良いイシューであることが多く、比較表現が入ると尚良いという主張がされているが、本質的なイシューは個別の文脈によって規定されるところが多く、「良いイシュー」をパターン化することはほぼ不可能だと思う。良いイシューに関する安宅氏の主張をいくつか引用します。

よいイシューの表現は、「〜はなぜか?」という、いわゆる「WHY」ではなく、「WHERE」「WHAT」「HOW」のいずれかのかたちをとることが多い。(中略) 「答えを出す」という視点で課題を整理すると、「WHERE」、「WHAT」、「HOW」のかたちになることが多いことは理解してもらえるだろう。

イシューからはじめよ 知的生産のシンプルな本質(安宅和人著)

文章のなかに比較表現を入れる、というのもよいアイデアだ。...たとえば、ある新製品開発の方向性のイシューの場合であれば、「てこ入れすべきは操作性」というよりも、「てこ入れすべきは、処理能力のようなハードスペックではなく、むしろ操作性」としたほうが何と何を対比し、何に答えを出そうとしているのかが明確になる。可能であればぜひ使いたい技だ。

イシューからはじめよ 知的生産のシンプルな本質(安宅和人著)

イシュー見極めにおける理想は、若き日の利根川のように、誰もが「答えを出すべきだ」と感じていても「手をつけようがない」と思っている問題に対し、「自分の手法ならば答えを出せる」と感じる「死角的なイシュー」を発見することだ。

イシューからはじめよ 知的生産のシンプルな本質(安宅和人著)

戦略コンサルタントとしてのマインドセット

戦略コンサルタントは自由な仕事です。成果さえ出せば、いつどこで何をしていても、上司からとやかく言われることはありません(最近はファームによってはそうでもなくなっている面もあるようですが)。巻末の安宅氏による一節は、戦略コンサルタントにとって深い含蓄がありますので、参考に紹介します

「コンプリートワーク」をするためには命を削るような思いをするだろうが、命を削ることそれ自体には何の意味もない。その酷薄なまでの真実が、僕らを時間から解放し、本当の意味で自由にしてくれる。「人から褒められること」ではなく、「生み出した結果」そのものが自分を支え、励ましてくれる。


イシューからはじめよ 知的生産のシンプルな本質(安宅和人著)

著名人による書評

イシュー特定における草分け的な書籍であるため、著名人の推薦も多いですが、マッキンゼーで動機であった伊賀泰代氏のコメントを引用します。伊賀泰代氏は戦略コンサルタント、採用マネージャーとして17年間マッキンゼーに在籍しており、「採用基準」や「生産性」の書籍が有名です。

彼(安宅和人氏)が2010年に出した『イシューからはじめよ』という書籍のタイトルは、問題解決に置いてもっとも重要なポイントを、ずばりと指摘しています。それは、「何が問題なのか」という起点の正しい理解が、何より重要だということです。解くべき課題=イシューを取り違えると、どれほど詳細に問題を分解し、膨大な情報収集や多岐にわたる分析を行っても、正しい解にはたどり着けません。

生産性 P.231(伊賀泰代著)

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