M&A戦略の立案

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M&Aはビジネスパーソンが耳にする機会が増えてきている言葉ですが、うちの会社も(自分も)どうすればM&Aができるのだろう?という疑問は多くの方が漠然と抱いているのではないかと思います。

そこで、総合商社、戦略コンサルティングファームでM&Aを幅広く対応してきた筆者が、M&AのプロセスをM&A戦略の立案、デューデリジェンス(特にビジネスデューデリジェンス)、バリュエーション、契約交渉の5つに分けて、それぞれ解説していきたいと思います。

まず今回はM&A戦略の立案について解説していきたいと思います。

「M&A戦略の立案」とは一言で言うと、M&Aを行う目的と対象の明確化・優先順位付けを行うことです。具体的には、以下のような問いに対して答えを出すことだと言い換えることができます。

自社は何を目指したいのか(=目指す姿の定義)
その目指すべき姿の実現に向けてM&Aがどう位置づけられるのか(=M&Aの位置づけの明確化)
その候補先企業にはどのような企業があり、それらをどのように優先付けるのか(=M&A候補企業出しと絞り込み)

目指す姿の定義

漠然とした問いですが、噛み砕いていうと、「自社の向かうべき方向性を5Wで考える」ということです。例えば以下のような問いに対して答えを出すことです。

  • 自社がどの市場で、何を製品として(どの製品領域で)戦っていくべきなのか
  • どのような理由から当該市場・製品(領域)で戦うことが重要なのか
  • いつまでにどのような状態を目指すのか
  • それを推進するのは誰か

例えば、回転寿司を展開するスシローは2021年9月までの3カ年の中期経営計画として、
1.国内スシローの出店拡大の継続
2.新業態によるすし周辺市場の開拓
3.海外事業の本格展開
をかかげています。

  • 1.国内スシローの出店拡大については、今後の国内の(Where)人口動態・行動変化に対応していくことを目的(Why)とし、2021年まで(When)年間30店のペース(How much)でスシローを(What)出店
  • 2.新業態の開拓については、2021年まで(What)杉玉という寿司居酒屋(What)を中心とした国内(Where)積極出店
  • 3.海外事業については、東アジア、東南アジア、北米(Where)を中心に、2021年までに(When)海外売上高200億円、海外店舗比率10%(How much)を目指す

としています。

スシローは外食事業でもあり、中期経営計画の中で自社の向かうべき方向性を非常に明確に表現できている企業です。自社の向かうべき方向性をこのように明確にしておくことが、M&A戦略立案の第一歩です。

M&Aの位置づけの明確化

自社の目指すべき姿が明確になったら、その実現に向けてM&Aをどう位置づけられるかの検討に進みます。

M&Aの目的を大きく二分すると、①対象会社の顧客を取り込み、規模を取りに行く、②対象会社の広義の機能(製品、地域、サプライチェーンの一部、人材など)を獲得するに分けられます。あまり規模が重要ではないケースで、機能の獲得を自力でできるのであればそのM&Aは無意味なものになります。

ちなみに筆者が総合商社で働いている時期に、「売上や利益をM&Aで買う」というようなことを言っている人がいましたが、本当にそう思っているのであればそのM&Aはやめたほうが良いと思います。(冗談で言っていたと信じていますが)

スシローのケースであれば、「2.新業態による寿司周辺市場の開拓の実現」に向け、高級寿司チェーンを買収したり、「3.海外事業の本格展開」に向けて、海外外食チェーンやオペレーターを買収したりすることなどが考えられます。上流サプライチェーンの獲得として、海鮮資源の養殖事業を買収するというようなケースもあるかもしれません。

M&A候補企業出しと候補企業絞り込み

このプロセスは「ロングリストの作成と、ショートリストへの絞り込み」と表現されることが多いです。例えばスシローの例で、タイにおける寿司事業に進出したいのであれば、タイの寿司関連外食事業者を可能な限り抽出する。これがロングリストの作成です。SpeedaやBloombergのデータベースを使いながらロングリストの作成をする企業が増えてきているのではないかと思います。

一方ショートリストへの絞り込みは、何らかの軸でロングリストの企業から、コンタクト可能な企業数に絞り込んでいくというプロセスです。持っている機能や、業界内での位置づけ(リーダー?フォロワー?)に加えて買収金額規模や割安感、企業のステージ(上場/非上場、成熟/ベンチャー)などで絞り込んでいくケースが多いです。

M&A戦略立案のまとめ

以上、M&A戦略立案のプロセスを、目指す姿の定義、M&Aの位置づけの明確化、候補企業出しと絞り込みという3つに分けて説明しました。M&Aというと候補企業出しのイメージが強いですが、目指す姿の定義や、M&Aの位置づけの明確化という上流工程さえできていれば、候補企業出しは自然発生的に可能ですので、これらの上流工程を確実に実施し、組織的な合意を得ておくことが有効なM&Aの検討につながります。

中堅社員などが、初めてM&Aのソーシングを行う場合は、課長級、部長級とこれらを握っておくことで、候補企業出しを単なる作業に位置づけることがスムーズなM&Aの実行につながります。(あくまで理想論で、現実にはそうでないことも多いですが)

M&Aと聞いて、一足飛びに候補企業を探しに行くのではなく、企業の目指すべき姿やM&Aの目的、位置づけに立ち返って検討ができると皆様のM&Aの検討がより実りあるものになるのではないかと思います。

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