武田薬品工業、大衆薬(OTC)事業を米PEファンドブラックストーンへ売却へ

武田薬品工業、大衆薬(OTC)を手掛ける武田コンシューマーヘルスケアの売却手続きを進行中

武田薬品工業(以下武田薬品)は4月より、武田薬品の大衆薬(OTC)事業を集約して手掛ける武田コンシューマーヘルスケアの売却手続きを進めていることが報じられています。野村證券をセルサイドアドバイザーとして、新型コロナによる自粛一色の世の中を横目に、ゴールデンウィーク明けに武田コンシューマーヘルスケアの一次入札が実施されたようです。

OTC(大衆薬)とは、Over the Counterの略でして、薬局のカウンター越しに売買される医薬品(つまり常備薬)を意味します。武田コンシューマーヘルスケアは、アリナミンVやベンザブロックなどが有名です。

武田薬品は、武田コンシューマーヘルスケアの売却の目線として、EBITDAの20倍(約4,000億円)を考えているとのことですが、M&Aの常識からするとかなり割高であるということや、新型コロナによる景気後退が懸念される中、順調にプロセスが進まない可能性についても指摘されています。

2020.08.30追補
武田薬品は8月24日、同社の大衆薬事業を米PEファンドのブラックストーンへ2420億円(企業価値ベース)で売却することを決定したと発表しました。2021年3月31日までの株式譲渡を目標としています。

武田コンシューマーヘルスケア(大衆薬事業)売却の背景

武田薬品は2019年にアイルランドの製薬企業シャイヤーを買収しました。買収価額は6兆を超え、日本企業で史上最高額のM&Aとも言われています。シャイヤーの買収により、武田薬品には大きな有利子負債がのしかかっており、バランスシートリスクの低減のため非中核事業の売却によるキャッシュ創出を加速しています。

武田薬品の社長を務めるクリストフ・ウェバー氏は、大衆薬事業(つまり武田コンシューマーヘルスケア)は売却しないと明言していましたが、財務体質の改善のため、武田コンシューマーヘルスケアの売却はやむを得ない判断と市場では評価されています。

武田コンシューマーヘルスケア(OTC事業)の売却候補先

大衆薬(OTC)市場では、市場シェアの15%弱を持つ、大正製薬を筆頭に、ロート製薬、第一三共ヘルスケアが続き、武田コンシューマーヘルスケアは4位となっています。武田コンシューマーヘルスケアの売却先としては、武田コンシューマーヘルスケアを傘下に収めることにより業界トップの地位を確立できる大正製薬や、業界首位に肉薄できるロート製薬などが有力な候補として挙げられています。

特にロート製薬については、2019年3月まで武田コンシューマーヘルスケアの社長を務めた杉本雅史氏が2020年より社長に就任しており、武田コンシューマーヘルスケアの製品、人材を熟知していることから、本格的に買収に乗り出す可能性があるとも言われています。

一方で、一次入札に参加した買収候補として、PEファンドの存在も取り沙汰されています。規模の大きい案件であることもありKKR、ベインキャピタル、ブラックストーン、CVCなどおなじみの大手の名前が上がっています。最終入札は7月下旬に予定されています。

ブラックストーンは日本で初の投資案件として、2019年にあゆみ製薬を傘下に収めており、ファンド勢の中ではより強い食指を伸ばす可能性があるのではないかとも考えられます。(OTCと処方箋は違うので、単純にシナジーあるとは言えませんが)

4,000億円規模の買収となると、PEファンドはLBOによるファイナンススキームを組成することになりますので、新型コロナによる景気後退が懸念される中プロジェクトにのみ紐付きの資金調達を金融機関から引き出せるかというのも注目です。

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