ケース問題
事業別業績が以下のような乳飲料メーカーにおいて、ROA15%を達成するにはどうすれば良いか(以下のような情報が与えられます)
- 足かせとなっている事業、期待できる事業は?
- 事業別の取組み方針はどうすべきか?(短期/中期の時間軸とともに)
出題実績
少し、時期は古いですがBCG(ボストンコンサルティンググループ)のケース面接でよく出題されていました。ボストンコンサルティングでは昔は5-6パターンの問題から各面接官が選んで出題するというやり方ですが、最近は若干傾向が変わっています。
解答例
足かせになっている事、期待できる事業
問いはROA15%を達成する(ROAを向上させる)ということであることを改めて押さえましょう。ROAを向上させるには、営業利益をあげるか、資産を減らすかのいずれかです。
まず、足かせになっている事業です。それぞれのROAを比較してみると、ワイン事業は非常にROAが低く、資産額も大きいため全社のROAの低下に対するインパクトが大きいことがわかります。全社のROAは約9%ですが、仮にワイン事業から撤退した場合、ROAは14%弱まで向上します。
続いて、期待できる事業です。営業利益をあげるということですから、利益率の高いビジネス、つまりプレミアムデザートを伸ばすのが効率が良さそうです。シェアが高い粉ミルクはどうでしょうか。シェアが高いビジネスの場合、市場規模がよほど伸びるか、値上げしても顧客離れが起きないほどブランドが確立しているということがない限りは、利益の高成長は期待できません。粉ミルク市場は少子化、母乳育児が推奨されている国内においては成長市場ではなさそうですから、期待するのは難しそうです。
事業別の取組み方針
BCG(ボストンコンサルティング)のプロダクトポートフォリオ理論で各事業を整理することができますが、必ずしもそこまでやる必要はありません。
粉ミルク:現状維持(極力長期間延命)
低成長の市場で高シェアが確保できていますのでBCG(ボストンコンサルティング)のプロダクトポートフォリオ理論でいうところの「金のなる木」に当たります。このようなビジネスは、かける手間を最小化しつつ、シェアを維持することが全てです。
牛乳、バター・チーズ:中期的にサプライチェーンの見直しや小売店舗との決済条件を見直すこと資産圧縮
既に30-40%のシェアを取っており、成熟市場である中、売上を劇的に増やすことは難しそうです。プレミアム路線の牛乳・バター・チーズの製品展開もあり得ますが、大した規模にはならないでしょう。取り組むとすれば、資産削減だと思います。サプライチェーンの見直しによる在庫圧縮、小売店舗との取引条件の見直しによる売掛金の圧縮などが考えられます。
プレミアムデザート:短期的に製品開発を強化
BCG(ボストンコンサルティング)のプロダクトポートフォリオ理論だと問題児に当たります。ここは成長市場の可能性があるため、製品開発に加えて、チャネルの多様化施策として外食店舗やコンビニとの協業などが考えられます。有名人とのコラボによるマーケティング(広告)施策なども良いかもしれません。シェアが固まっていない成長市場においては、製品の魅力度を高めることが最も有効なため、優先順位をつけるとすればセオリー通り製品開発の強化かと思います。
ワイン:SKUの絞り込みによる在庫削減(ワインは商社ビジネスだという面接官の補足あり)
ワインは産地、生産者、年代、ぶどう品種などワインといっても非常に種類が多く、それぞれ2-3本ずつ持っているだけでも相当の在庫となってしまいます。したがい、パレートの法則により売れ筋と死に筋のSKUを見極め、在庫を削減することでROAを向上させるという方向性があります。またROAを重視するのであれば、究極は事業撤退という選択肢もあります。
これからBCG(ボストンコンサルティンググループ)のケース面接を受けることを予定している方は、以下の記事も参考にして頂ければと思います。
>>>BCGケース面接4:チョコレートメーカーの海外戦略
BCG(ボストンコンサルティング)の戦略コンサルティング会社としての特徴については、下記のページでもまとめていますのでご一読ください
>>>BCG(ボストンコンサルティンググループ)の特徴