新卒なら総合商社、戦略コンサルどちらか

今回は少し趣向を変え、新卒の就職活動における戦略コンサル志望者向けトピックです。

新卒の就職活動においては志望業界の絞り込み・業界研究、エントリーシート作成、面接対策などが活動の骨子です。この記事では志望業界の絞り込みに向けて、新卒で入社するなら総合商社と戦略コンサルのどちらが魅力的かというテーマについて考えてみたいと思います。

このテーマを取り上げたかった理由は2つあります。

まずは私が総合商社1社と戦略コンサル2社で勤務した経験があり、戦略コンサル2社では3つの総合商社向けプロジェクトを回した経験があることから、戦略コンサルと総合商社の実態を知っている人としては日本でも有数(?)の存在ではないかと思うからです。

もう1点は、就職活動における戦略コンサルと総合商社の人気過熱に関連しています。近年、新卒の就職活動における人気企業ランキングにおいては、戦略コンサルと総合商社が上位10位をほぼ独占しています。東大などトップレベルの大学においては、戦略コンサルと総合商社を併願している就活生も多いと思います。

しかし、戦略コンサルと総合商社ではその内実は全く異なるのです!プロのスポーツ選手と、将棋の名人ぐらいの違いがあります。わかりにくい例えかもしれませんが(笑)

実体験を基に、戦略コンサルと総合商社の違いを整理した上で「戦略コンサルと総合商社のどちらが魅力的か」という問いに明確なスタンスを取ることは、就活中の大学生にとっても価値があることだと考えました。

ちなみに、仮に戦略コンサルと財閥系総合商社から内定をもらった場合の最近の傾向としては以下のようなイメージかと思います。

①財閥系総合商社もしくは伊藤忠と、MBB(マッキンゼー、BCG、ベイン)のどれかに内定:大半のケースが総合商社を辞退し、戦略コンサルへ

②財閥系総合商社もしくは伊藤忠と、その他戦略コンサル(ATカーニー、Strategy&、ローランドベルガー)に内定:総合商社に進む人と戦略コンサルに進む人が半々。ただし、カーニー、Strategy&、ベルガーに内定した就活生は総合商社の選考プロセスに進まないという例も多いため、事実上大半はMBB以外の戦略コンサル>総合商社となっている。


③財閥系総合商社もしくは伊藤忠と、その他コンサル(デロイト戦略、アクセンチュア戦略、DIなど)に内定:半数以上は総合商社へ。ただし、総合商社の人気が一服していることもあり、その他コンサルを選ぶケースも1-2割ありそう。

給与:瞬間の最大値としてはコンサルが上だが、生涯年収は総合商社が有利

就活生にとっての関心事の1つとして、給与があると思います。給与に関しては、瞬間的に見ると戦略コンサルの方が高いですが、生涯年収を考えると総合商社が上というケースも多いです。

戦略コンサルはだいたい入社後3年で年収1,000万円を突破し、5-6年で年収1,500万、マネージャーとなる入社8-10年(30歳過ぎ)で年収2,000万というのが一般的なスピードです。30歳そこそこで、2,000万円をもらえる会社は投資銀行と戦略コンサルしかないと思いますので、非常に魅力的な昇給スピードであることは言うまでもありません。順調に行けば、40歳前後でパートナーとなり、5,000万円以上の年収を手に入れることができます。ここまでくると、それなりの大手企業の社長並です。

30歳前後で2,000万円をもらえる会社は投資銀行戦略コンサルしかないと思いますので、非常に魅力的な昇給スピードであることに疑いの余地はありません。順調に行けば、40歳前後でパートナーとなり、5,000万円以上の年収を手に入れることも可能です。ここまでくると、それなりの大手企業の社長並です。

一方、総合商社はというと、3-5年で年収1,000万円に達するという点については、戦略コンサルと大差がありません。しかし、1,500万円の到達には約10年、2,000万円の到達には約20年かかります。5年目以降の額面では総合商社社員の給与は戦略コンサルとは相当の開きがあるように見えます。

しかし私は給与だけ見た場合は、多くのケースで総合商社が有利であると考えています。

1つは戦略コンサルの仕事は長続きするものではないことです。多くの方がご存知の通り、戦略コンサルはUp or Outの人事制度を採用しています。年収2,000万円をもらえるマネージャーに上がることができるのは、新卒採用で入社した同期のうち約20%、5,000万円以上をもらえるパートナーに上がることができるのは更に狭き門で約5%です。多くの人はマネージャーに昇格する前か、マネージャーに昇格後1-2年でファームを去っていきます。ポストコンサルの転職においても、起業しない限りは総合商社の給料を上回ることはなかなか難しいというのが実態です。

2つめの理由は海外駐在です。総合商社では少なくとも1回、多い人で3-4回海外駐在をする機会があります。海外駐在中は駐在手当・危険地手当などに加え、一定程度は会社が税金も負担します。さらに日々の移動や食事も経費を使える機会が多く、手取り金額としては日本本社にいるときと比べて1.5-2倍です。総合商社の社内では、「生涯年収は出世ではなく、海外駐在の長さと回数で決まる」とすら揶揄されています。

能力・成長:圧倒的に戦略コンサルが有利

社員の能力の高さや成長環境は圧倒的に戦略コンサルが有利です。戦略コンサルで新卒で2-3年働いた大抵の社員は、ハードスキル面では総合商社の課長クラスと同等ぐらいではないかと思います。さらに、新しいことにチャレンジする際のマインドセットの高さも戦略コンサルが圧倒的ですので、将来の成功に向けて自分を高めたいという思いが強い方は、戦略コンサルが合っていると思います。

近年、総合商社は投資に力を入れていますが、財閥系でも投資業務に知見のある社員は非常に少ないです。会社によっては、戦略コンサルや投資銀行出身の中途社員が、知見を共有しながら投資業務を回しているというのが実態というところもありますね。

唯一総合商社が上回っている可能性のあるスキルは交渉スキルですが、これも同じ会社・ポジションで交渉を行えば大差ないのではないかと思います。(総合商社の社員で「自分は交渉力がある」と思っている人は、交渉力があるのは社員ではなく会社であるという事実に気づいていないケースが多い)

あっ、総合商社に行けば、”飲み会スキル”が鍛えられることは間違いないですね。飲み会スキルは戦略コンサルとは比較にならないほど総合商社の社員は高いです。

だいたい、オフィスの中ではこんな会話が繰り広げられています。

社員A:「昨日xx部長と飲みました」
社員B:「xx部長と飲めるなんてすごいね。今度俺も誘ってよ!」

市場価値:圧倒的に戦略コンサルが有利

残念ながら総合商社のキャリアは、社外に出ようというときにあまり評価されません。30歳前後での転職は、「新卒で総合商社に入れた人は優秀だろう」ということで、ポテンシャル採用をしてくれる会社もありますが、それもせいぜい35歳までです。40歳を過ぎると、総合商社のキャリアは指数関数的に価値を喪失します。

戦略コンサルは1-2年で退社したとしてもそれなりに市場は評価してくれますし、40代まで戦略コンサルで生き残れた人に対する市場の評価は絶大です。

結局総合商社と戦略コンサルどちらが良いか

仮に今後も戦略コンサル・総合商社の就活における人気が過熱し続けたとすれば、私は「まずは戦略コンサルの門を叩く」ことをお勧めします。総合商社への入社は戦略コンサルをやってみて、「一生続けられそうにないな」と思ってからでも遅くはありません。戦略コンサルの経験はあなたを総合商社でトップクラスに優秀な社員にするでしょう。

また戦略コンサル経験者は(若ければ)基本的に業界を問わず転職が可能です。「自分の人生は自分で決める」を体現できる最高の環境です。

もちろん、超一流の大企業で一生安泰に働きたいのであれば、戦略コンサルよりも総合商社を優先するという判断もあるかもしれませんが、今後そんなモチベーションの人に対しても総合商社が終身雇用を維持し続けるかも不透明です。仮に終身雇用が崩壊すれば、モチベーションが低い人から淘汰されていくのは確実です。

安定的な給料だけに目を向けると、総合商社に傾いてしまう気持ちもありますが、特に新卒の就職活動においては、少し複合的な目線で自身のキャリアを考えてみると良いと思います。

以下で、筆者が総合商社に務めていた経験を踏まえて、総合商社のTOP3(三菱商事、伊藤忠商事、三井物産)の特徴をまとめています。

三菱商事の特徴

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