戦略コンサルの御用達 ビザスクの上場

コロナウイルスが日本国内で猛威を振るう中、戦略コンサルティング会社がプロジェクトを運営する上で、非常に重要な役割を果たしているビザスクという会社が新規上場を果たしました。

公開価格1,500円に対して、初値は1,310円でしたが、創業後8年弱の会社に約108億円(時価総額106億円、現預金2億円)の企業価値が付いたことになります。

ビザスクとは?

ビザスクは2012年3月に、端羽英子社長によって設立された会社で、知見プラットフォーム事業を生業している会社です。1978年生まれの端羽英子社長は34歳でビザスクを立ち上げました。

「知見プラットフォーム」はあまり耳慣れない言葉ですので簡単に説明すると、特定の分野に詳しい人(アドバイザー)のデータベース会社のようなものです。例えば喫茶店の新規参入に詳しいAさんがビザスクのデータベースに登録することにより、喫茶店に新たに参入したいBさんはビザスクを通じてAさんから喫茶店ビジネスについてインタビュー形式で話を聞くことができます。

新規参入時や自分の専門外のことについて効率的に学ぶ際には、その業界の詳しい人に聞いてみることが極めて重要であり、ビザスクはそんなニーズに応えるサービスを展開しています。ビザスクにおけるアドバイザーの登録数は2019年11月末時点で8.6万人に達しています。

ビザスク創業者 端羽英子社長

ビザスク創業者の端羽英子社長は大変なエリートです。

端羽英子社長は東京大学経済学部を卒業後、新卒でゴールドマン・サックスの投資銀行部門に入社し、日本ロレアルにおいてメイクアップ/スキンケア製品ブランドの「ヘレナ・ルビンスタイン」の経営管理業務を担当します。その後、日本のプライベート・エクイティ・ファンド(PEファンド)の草分け的存在であるユニゾン・キャピタルでPE投資の最前線で5年間勤務されるなど、絵に書いたようなエリートキャリアを歩まれています。

また学生結婚・出産をされ、子どもを連れてMITスローンにてMBAまで取得されるという、私にとってはもう信じられないようなバイタリティの持ち主です。(私はMBA留学時代に家族や子どもがいる状況など想像さえできませんでした)

コンサルティング会社にとってのビザスク

コンサルタント(特に戦略コンサルタント)はクライアント企業から、自分の専門以外の領域の支援を求められることがあります。コンサルタントにとっては未経験の領域におけるキャッチアップの速さも非常に重要です。

未経験の領域において素早くキャッチアップするには、「詳しい人に聞いてみる」ことが重要です。しかし、自身や知人のつてでそのような方を素早く見つけていくことは簡単ではありません。したがってビザスクのように当該分野に詳しい人を斡旋してくれる会社は非常に有用です。事実、(戦略)コンサルタントはごく当然のようにビザスクや、ビザスクの強豪である米国企業Guidepointなどを日常的に活用しながらエキスパートインタビューを行っています。

ちなみに、ビザスクの目論見書に売掛金残高の上位が記載されていますが、1位のボストン・コンサルティング・グループはじめ、ベイン・アンド・カンパニー野村総合研究所マッキンゼーなどがランクインしており、ビザスクにとってコンサルティング会社がいかに重要な顧客であるかを示唆しています。

ビザスクの今後の成長

ビザスクは今後の成長戦略として、国内展開の拡大に加えて海外展開の強化を掲げています。ビザスクはやや成長の勢いは落ちる可能性が高いものの、今後も大きく成長を遂げていく可能性が高いと考えられます。

国内展開については市場拡大の波に乗りながら、独自の強みを生かして益々の拡大を遂げていくものと考えられます。私はビザスクの成功要因は、カスタマー・エクスペリエンスが究極的に高まるよう、マッチングの仕組みを洗練させてきたことにあると考えています。単なるマッチングビジネスであれば、競合としてGuidepointGLGThird Bridgeなども存在します。私はこれら全てを使ったことがありますが、候補者出しの対応スピード、マッチングプラットフォームのユーザーインターフェースの簡便性、候補者情報の充実さ、費用の安さ(大抵が10万円/件以下)などビザスクの使いやすさは他を圧倒しています。

海外展開については、地の利がないビザスクが欧米市場で既に数十万人単位の登録者を抱える競合と伍していくことは簡単ではないと考えられます。しかしASEAN諸国など、非英語圏の成長性高い国において、日本の展開ノウハウを活かしながら事業拡大を図ることは可能性があるように感じます。

国内・海外展開ともに大きな可能性を感じるビザスクですが、ここ数年のコンサルティング業界の拡大基調、M&A件数は、今後やや落ち着いてくる可能性が高く、ビザスクが今後事業会社の新規事業向けのインタビューなどを受注していったとしても、成長性はやや安定してくるのではないかと考えられます。

唯一のリスクはコロナショックなどにより、今後景気が後退局面に入り、ビザスクの大顧客であるコンサルティングファームのプロジェクトが減ったり、コンサルティングファーム内でプロジェクトのコスト削減をし始めたりしたときでしょうかもしれません。仮にそうなったとしても、うまく乗り切っていけそうな力を端羽英子社長に感じるのですが。

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