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日本郵政、豪トール・ホールディングスについて売却も含め検討開始か
2020年6月、オーストラリアの地元紙が日本郵政が2015年に約6,200億円を投じて買収したオーストラリアの物流会社トール・ホールディングスの売却検討に入った可能性を報じています。日本郵政はトール・ホールディングスの将来的なエグジットに向けて、野村証券をアドバイザーに選定した上、一部事業の売却や、物流拠点など一部資産の売却、他社との統合も含め検討に着手したと報じられています。地元経済紙であるオーストラリアン・フィナンシャル・レビューによると、日本郵政はトール・ホールディングスの完全売却も視野に、検討を行っているとも報じられています。(他紙からは「完全売却は否定」との報道もあり)
2021.04.24追記:
日本郵政は2021年4月21日、トールHDのエクスプレス事業を豪投資ファンド アレグロに7億円で売却すると発表しました。本売却に伴い、日本郵政は2021年3月期決算において、674億円を特別損失として計上する見込みです。
日本郵政によるトール・ホールディングス買収の経緯
日本郵政は2015年に6,200億円を投じてトール・ホールディングスの株式を100%取得し、同社を子会社化しました。日本郵政はトール・ホールディングスの買収により、日本郵政が得意なB to Cでの個配事業に加え、サードパーティ・ロジスティクスなどB to B分野での国際輸送事業を新たな成長の柱と位置づけました。
しかしながら、B to Cが得意な日本郵便にとって、B to Bを主な事業領域とするトール・ホールディングス事業とのシナジーを創出することは容易ではなく、加えて資源価格の下落によりトール・ホールディングス主力事業である石炭・鉄鉱石など資源輸送事業の規模・収益性が低調となってしまったことで、利益ベースでは年々先細りとなってしまっています。
2015年当時、トール・ホールディングスの買収を主導していたのは、元東芝社長で当時日本郵政の社長であった西室泰三氏でした。西室氏は東芝時代にも相談役としてウエスチングハウスの買収に影響力を及ぼしていたとも言われており、ウエスチングハウスとトール・ホールディングスという、日本大企業によるM&Aの大失敗に2度も大きく関与した経営者と知られることとなってしまいました。
トール・ホールディングス売却についての新型コロナウイルスによる影響
日本郵便による、トール・ホールディングスの売却や事業整理の検討は、新型コロナウイルスによる影響を受ける可能性があります。原油価格も一時期と比べると戻ってきていますが、新型コロナウイルスによる実体経済の影響は長期化すると考えられることから、売却交渉におけるバリュエーションは難航する可能性が高いと考えられます。
新型コロナウイルスのオーストラリアにおける累計感染者は6月28日現在7,641人、死亡者は104人となっており、人数としては日本よりも少なくなっています。しかしながら、メルボルンで第2波が懸念され始めていることや、南半球では今後冬に入ることもあり、オーストラリア国内の新型コロナウイルス患者数は増える可能性もあります。そうなった場合、トール・ホールディングス事業の売却候補先のソーシング自体が難航するということも考えられます。